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バンガロール珍道中

ニューヨークに住んで二十余年、年に一度くらいは海外ツアーに出ているが、思い出深い旅といえばハーモニカ奏者ウィル・ギャリソンのインドツアーが筆頭ではないだろうか。但し、音楽的に、または紀行として興味深かったというよりは、単に失敗譚の連続で笑えるという意味で面白いのであるが。 ウィル・ギャリソン この話の面白さを理解するにあたって、ウィル本人がいかに変わった人物であるかをまず知っておく必要があろう。ウィル・ギャリソンはカーリー・サイモン、チャカ・カーン、スティング、ジャコ・パストリアス、ジャッキー・バイヤードなどと共演歴があるハーモニカの名手であり、その演奏は映画「バグダッド・カフェ」のサントラでも聴くことが出来る。長らく巨匠トゥーツ・シールマンスの後継者と目されていたが残念なことに現在それに見あった名声を享受しているとは言い難い。短期間交際したシンガーソングライター、マデリン・ペルーを相手取って一億円の訴訟を起こしてみたり不動産詐欺にあった友人の不審な事故死が陰謀であるとニューヨーク州検察を告発したりと奇行ばかりが目立っている。スティングのソロツアーに誘われたときは、ロンドンでのリハーサルの最中にひとのカウベルを勝手に叩き出してヴィニー・カリウタの逆鱗に触れ 馘 ( くび ) になったという。(但し、このエピソードにもかかわらずスティングとの共演自体は続いているようだ。) デビュー当時のウィル・ギャリソン お兄さんはハーバードの物理の教授であり、いいとこの出なのは間違いない。姉と共にアッパーウェストサイドに大きなアパートを持っていていかにも稼ぐ必要のなさ気な生活感のない暮らしをしている。優しいピュアな人柄なのだが精神的に不安定で、あるとき頼んだスープが来なかったという理由で仕事の最中につむじを曲げて家に帰ろうとしたことがあった。また、わたしが長年にわたってホストを勤めた深夜一時からのジャムセッションに遅刻したのは先にも後にも彼だけである。このように素行に問題の多いウィルなのだけど、演奏はため息が出るほど素晴らしい。世界一のジャズハーモニカ奏者であると未だに信じているのはわたしだけではあるまい。 出発まで さて、そのウィルからインドツアーの話があるのだけどやらないかと誘われたのは二〇一五年の三月頃のこと。クラフトビールを供するバンガロールのジャズクラブで週末に二晩演

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